世界を敵にまわしても



「……晴、あそこにあるCD見てもいい?」

「おー、気になるのあったら持って帰っていいよ!」


床に寝転がる晴に微笑んで、部屋の奥にある棚に近付く。


腰あたりの高さの棚にはコンポが置いてあって、その周りには何十枚ものCDが散乱していた。


知ってる、知らないアーティストが半々で、ジャンルは主にロックが中心みたいだ。


……そういえば晴のバンドは、ロックなのかな。ノージャンルだったかも。


1枚1枚見てから綺麗に積んでいくと、ケースに入っていないCD-Rを見つけた。


「ドラスティック……?」


CD-Rには英語で“DRASTIC”と赤いペンで走り書きされていた。


激烈なさまという意味だったか。強烈な、徹底的なという意味もあった気がする。


「晴、このCDって――…」


バンドの曲が入ってるの?という言葉は続かなかった。


振り返った先にあるドアが開いて、そこに先生が立っていたから。


「奏ちゃーん! マジありがとう!」

「朝霧に頼んでたのかよ」

「……」


泣くな。


先生があたしを見て驚いたことくらいで、傷付くことなんかない。