世界を敵にまわしても



「美月、キョロキョロし過ぎ!」

「こんな部屋学校にあったんだと思って」

「キタネー片付けろって言ってやれ」

「椿だって汚してくだろー!?」


ギィィーーンと晴が声色に合わせたかのように、ギターのノイズを響かせた。それにあたしも椿も笑って、心が少し落ち着く。


「てかヨッシー達遅くね?」

「あー、あいつ等教室の窓ガラス割っちゃって、担任の説教中!」

「バカじゃん」


……窓ガラス割ったって、何して遊んでたんだろう。


「あーあ。ヨッシー達いたら、美月に俺らの演奏聴かせてやんのになー!」

「どうせアドリブだろーが」

「新曲まだ出来てないんですー!」

「ハイハイ」


晴を軽くあしらう椿。この2人はあたしが思ってたよりも仲が良いみたい。


「あー喉乾いた。自販機まで行くのめんどいなー……連絡して買ってきてもらお!」

「ウチ等の分も頼め」


どう見ても椿が上に立ってるけど、晴も楽しげだからまぁいいのかな。


……晴と付き合えばいいのに、って、あの言葉。今思い出しても腹が立つより悲しさの方が勝った。


この1週間で、あたしはどんどん弱虫になってる気がする。


先生に会いたい。
でも、会えない。


音楽室に行きたくても、足がすくんで動けないままだ。


どうすればいいのか分からなくて、でもどうにかしなくちゃいけなくて。


そう思う度、足が鉛のように重くなる。