世界を敵にまわしても



そんな状況で結局1週間、先生を避け続けた。


さすがに連続で遅刻すると呼び出しを受けそうだから、3日目でやめたけど。


3日ぶりに遅刻しなかったあたしの名前を呼んだ先生の声は、いつも通りだった。


返事をしたあたしを、先生はあの眼で確認したんだろうか。俯いていたから、分からない。



週に2回あった音楽の授業も、毎度の事ながらほぼ自由時間のようなものだった。


前半はパート練習をして、後半少しだけ先生の授業。


列の合間を縫って歩く先生が横を通った時、呼吸するのも緊張した。


そんな自分が恥ずかしくもあり、惨めでもあったけど。


あたしの恋は始まったばかりで、終わってもいない。だから、溢れそうな涙は我慢した。



「なんて、強がり」

「何か言った?」


隣に座る椿に視線を移すと、あたしは緩く首を振った。


「独りごと」

「何ソレ。こわっ」

「はは! 美月でも独りごと言うんだなー!」


床に座ってギターを抱える晴が白い歯を見せて笑う。


先生を避けて1週間経った放課後、あたしと椿は軽音部の部室に来ていた。


A棟の3階、防音効果が施された部室みたいだけど、軽く外に音が漏れるらしい。


ドラムセットやアンプという機材などがある空間には、CDやスコアなんかも乱雑に置かれていて、いかにも軽音部という感じだ。


というより、音楽好きの若者の部屋と化してる。