世界を敵にまわしても



お風呂に入ったら少しは頭が冴えるかと思ったけれど、そんな事はなかった。


髪も乾かさずにベッドに倒れ込むと、ボンッと反動で体が少し浮く。すぐに沈んだ体は、お風呂上がりだというのに震えた。


……どうしよう。


何度そう考えても、答えなど出ない。


嘘だと言えば良かったんだろうか。逃げずに、返事を聞くべきだったんだろうか。


今更なかった事にも出来ないのだから、そんな事考えたって無駄なのに。


どうしてあたしの頭は後悔ばかりするんだろう。


あぁすれば、こうすれば。


時間が経てばいくつも思い付くのに、何でその瞬間に浮かばないんだろう。



自分はもっと冷静な人間だと思ってた。


他人の事も、自分の事も、どこか客観的に見ていると思ってたし、そんな人間ですとハッキリ言える。


『あたしが好きなのは先生だよ!!』


思いっきり怒りに任せて告白する人間なんているのか。いないよ普通。


自分がこんな単純な人間だと思わなかった。


本当は気付かなかっただけで、あたしはその場その場の感情に動かされる、至極単純な人間なのかもしれない。


「……知らなかった」


埋めた顔を更に強く布団に押し付けて、勉強しかしてこなかった事に少し後悔する。


公式や年表や国際情勢を叩き込んだ頭の中を探っても、導かれる答えはない。



明日から、どんな顔をして学校へ行けばいいの。