世界を敵にまわしても



「付き合えばいいのにーって」


悲しさを感じる前に、苛立ちが募った。


よりによって先生に言われるなんて、あり得ない。


「付き合わない」


ふてくされた顔で、不機嫌な声で、ハッキリと言った。


「宮本のこと嫌いなの?」

「嫌いじゃないけど、異性として好きって感情はない」

「男女の友情なんて、いつ変わるか分かんないよ?」


あぁ、うるさい。
そしてしつこい。


「きっと高城、宮本のこと好きになるよ」

「ならないってば!」


あたしが怒ってることなんか、既に顔に出てたはずなのに。何でそんな事言うんだろう。


何でそんなこと言われなきゃならないんだろう。


睨むと、先生は眉を下げて困ったように笑う。その姿が、あたしを寄り一層惨めにさせた。


分かってたことじゃないか。先生はあたしを生徒としか見てないことくらい、分かってた。


だけど、自分は他の生徒より特別でありたかった。心のどこかで、特別だと思ってた。



「まぁ、好きになったら……」

「うっさい! しつこいってば!!」

「……そんなに怒ると思わなかったな」


本当に黙ってほしい。怒るに決まってる。


あたしは晴が好きなわけじゃない。魅力的だと思うけど、好きにはならない。


「俺はただ、相談くらいならのるよって言いたかっただけなんだけど……そっか、宮本が好きなのかと思ってた」



ふざけないでほしい。