返信はしないことにして、あたしは階段を降りようとした足を止める。
「……」
見上げた先は3階に続く階段で、あたしは無意識にそれを駆け上がっていた。
「……何で」
音楽室に入ると、すぐに先生を見つけてしまう。
ちょうど黒板を消しているところで、思わず疑問を投げ掛けてしまった。
言葉よりも消えた足音であたしに気付いた先生は、姿を確認すると目を丸くした。
「……お昼の今でほんとに来るって、そんなにお菓子食べたかったの?」
昨日の今日でって意味合いだろうか。ていうか、何でいるんだろう。
「……職員室にいるのかと思った」
「あぁ、今日はね。いいんだ」
いないと思ってたのに。いなかったら、諦めて帰ろうと思ってたのに。
手に持ったままの携帯をギュッと握り締めると、先生は黒板消しを置いた。
「さっき、宮本と話してたでしょ」
「え?」
「俺さっきまでベランダに居たから」
あぁ、なるほど。見えてたって事か。……気付かなかったな。
先生が手に付いたチョークの粉を払う音を聞きながら、聞こうか聞かないか悩む。
抱き締め返してくれた理由ではなて、メールアドレスと、番号。
……無理だ!
ふと知りたいと思って来ちゃったけど、やっぱり無理!
そもそも何でって聞かれたら答えられない。



