世界を敵にまわしても


――――…

「あれ? 美月ー!」


一度通った校門への道を戻ると、昇降口の階段にたむろする晴の姿が見える。


晴は大きく手を振って、近付くと大きな目が不思議そうにあたしを見つめた。


「椿と帰ったんじゃねーの?」

「先に帰ってもらった。携帯、机の中に忘れて」

「あははっ、ソレは最悪だぁ~」


晴の周りに集まって笑うのは男女半々の上級生で、ヨッシーも居たけど、さすが最高ランクだ。


「あ、美月今日ヒマ? 俺らこれから遊び行くんだ!」

「ゴメン、今日は早めに帰らなきゃだから」


那月の勉強見てあげる約束をしてるんだ。


「そか、じゃ、また今度!」

「うん、バイバイ」

「おー!」

「じゃーなーっ」


ヨッシーにも微笑み返して、先輩達にも軽く頭を下げながら下駄箱に向かう。


早々と2階へ行き誰も残っていない教室へ入って、自分の机の中から携帯を取り出した。


「……はぁ」

那月に少し遅れるってメールしなきゃ。


引いた椅子を戻して教室を出ながら、那月へメールを送信する。


母が小学生の那月に持たせた携帯は、もっぱら防犯用だけどこんな時は便利だ。


ふと階段を降りようとすると、椿からメールが受信されている事に気付く。


「……ドジって」

そうだけど。否定出来ないけど。


別れた時にも言ったくせに、またメールで言わなくても良くないか!