「み、みつっ! 美月の嘘つき! 今日真っ直ぐ帰るって言ってたじゃんか!!」
「い、言ってないけど……」
「ぎゃあああ! ゴメン奏ちゃん!! ホントマジでゴメン!」
音楽室から準備室に入ってこない晴は、顔だけ出して先生に謝っている。
今にも逃げだしたそうだけど、それはもう全力で謝って、泣きそうな顔をして。
……逃げだしたそうなのは先生で、泣きそうなのは、あたしの方か。
「……先生。どういう事?」
背中に問いかけても、先生は手で顔を覆って俯いてるようだった。
「ち、違う美月! 俺が言ったのは、守……守れ、間も……間もなく友達になれそうです!」
無茶ぶり過ぎてコメントしづらい。
「……宮本」
「はいぃ……っ!」
「帰れ、もうほんと……何してくれてんだ、ばか」
「ぎゃー! ゴメン、本当ゴメン! 俺帰るね! 美月もごめん! でも怒んなよ! 怒るとこじゃ……帰ります!」
顔を上げた先生に、晴は一目散に音楽室から出て行く。
あたしはドアを閉める先生の後ろ姿を見つめた。けれど、先生は一向にこちらを振り向かない。
ゆっくりと近付いて、真後ろまで来ても動かない先生は何を考えてるんだろう。
ごまかそうとしてる?また、何もしてないなんて言うつもり?
「先生」
「……」
何でしょう、って、言わないの?



