「下駄箱でモメてた1人、あたしです」
椿があたしに向けていた視線を、多分菊池さんに向ける。先生も一瞬菊池さんを見たけど、すぐあたしに視線を戻した。
「確かに3対1でしたけど、ただ口論しただけです」
一体何なんだ。さっきまで一度もあたしを見なかったくせに、今度は1秒も逸らさない。
「そう、それで……理由は?」
どうせ分かってるくせに。と言いたいところだけど、こんな大勢の前で、晴が居るところで言うには菊池さんに酷過ぎる。
……え、もしかしてそれも分かって言ってる?
「……性悪……」
「ははっ!」
ポツリと呟くと、聞こえたんであろう椿が笑った。
それにクラスメイトは驚いたようだけど、何で笑ったのかは先生にも分かってないみたい。
……いや、微笑んでる先生は分かってそう。読唇術とか余裕で使えそうだし。
「……理由は話したくないのかな」
「聞いてどうするんですか」
クラスメイトの視線が物凄く痛い。
当たり前だ。あたしはこんな風に大勢の前で話すキャラじゃ、なかった。
「怒りはしないよ?」
「答えになってません」
「うーん。でも一応担任として、ね。代理だけど」
イラッとしたあたしに、気付いてるくせに。何なんだ本当に。



