……あぁ、もう。
その視線はいらないんだけど。
あたしが先に教室に入って机に鞄を置くまで、ざわついていた教室がゆっくりと静かになる。
クラスの一匹狼はショッキングピンクのヘッドフォンを耳に当て、あたしの前の席に座って飄々としていた。
教室に入った瞬間真っ先に目に入ったのはミキ達だったけど、直ぐに目を逸らされた、と言うより……。
「今日も仲良く登校したのぉ~?」
あたしと椿を見てすぐ、菊池さん達に目を向けていた。
鞄を机の横に掛けながら声がした方を見ると、既にあたしの目の前まで来ている。
「下駄箱で会っただけだけど」
「……ふぅん? 何で?」
会話がおかしいよね、これ。
あたしは椅子に座るのを諦めて、菊池さんと向き合う。ご丁寧に他のAランクも連れて来てくれるあたり、関心する。
「何でって、何が?」
「だぁからぁ~、何で下駄箱で会って? 一緒に来んの? 仲良いの?」
それはどうだろう。
数日前に初めてまともな会話をしたのに、『超仲良いです!』とは言えないな。
「まぁ、菊池さん達よりは仲良いと思う」
あたしを取り囲むAランクの人達の顔を見てハッキリ言うと、全員の顔が引きつったのが分かった。



