世界を敵にまわしても



――泣いてるみたいだと、思った。


静かな始まりは思いのほか高い音で、流れるように、追いかけるように、後から後から色んな音が出て来て。


上がったり、下がったり。
早くなったり、遅くなったり。

パッと音が消えて、すぐに晴がまた弾いて。

弾むように軽く、楽しげかと思えば、落ち込んだように音が重くなる。


「……」


切ない。


そう感じて直ぐに、晴の体が揺れるほど音が早く激しくなった。


結末を迎えるような……歌で言うならラストのサビ部分だろうか。


晴の指が忙しなく鍵盤を叩き、ゴクリと喉を鳴らした瞬間。


フッと手を上げた晴は、そのまま止まってしまった。



……え?


「はぁぁぁああ……疲れたっ!」

「え? 終わり?」


疲れたという晴を労うことも忘れて、あたしは思ったことを口にしてしまう。


「終わりっ! ゴメン、所々ミスった!」

「え? そうなの?」

「有り得ないってこの曲! 俺そこそこ弾ける方だけど、これは相当練習しないと完璧には無理! 変なとこで終わってるしさぁ~!」


あ、やっぱり途中で終わってるんだ。


てことは2枚目も、存在するってこと?