世界を敵にまわしても



「うっわ! 何だコレ!」


折り畳んで手帳に入れていた楽譜を手渡してすぐ、晴は目を見開いてそう言った。


そ、そんな直ぐに読めるんだ……。


あたしは晴の言葉よりそっちの方が気になって、ちょっと悔しくなる。


「何コレ、美月が作曲したんじゃないよな?」

「借りた本に挟まってたの。読める?」

「あー……まぁ読めるけど、かなり難しいよこの曲」


楽譜を見ながらピアノの椅子に腰掛けた晴は、少し真剣な顔だ。


「……晴ってバンド組んでるんだよね?」

「うん、ギター」

「ピアノも出来るの?」

「俺、大概の楽器出来るもん」


サラッと言う晴だけど、大概って何だ。1人オーケストラとか出来ちゃうの?


楽譜を置いた晴は「うーん」と唸ってから、あたしに視線を移す。


「これって、1枚だけ?」

「 ? うん、1枚だけ」

「うーん、そっか。まぁ、オリジナルなら……」

「何か変なの?」

「ちょっとね。尻切れトンボって感じ。んー、指追い付くかなー……」


ポーン、と晴が鍵盤に手を置いたことで、あたしは急に緊張する。


……聴ける。



浮かばなかった、あの楽譜のメロディーが。