世界を敵にまわしても



「奏ちゃんって綺麗好きだっけ?」

「作業は全部ここでしたいんだけど、そうもいかないんだよ」

「へー。代理ってもやる事あんだなー」


いまいち会話が噛み合ってない気がするけど、この2人はいつもそんな感じか。


「じゃあ、後はクラスメイト同士話しなさい」

「頑張ってねー!」

「……さようなら」


先生はあたしと晴に微笑んで、準備室を出ていった。


……やっぱ何か違う。いつもまた明日って手とか振るのに。


いや別に、振られても返さないんだけどさ。


「美月って、勉強ばっかしてるわけじゃないんだなっ」

「え? あぁ、うん」


振り返ると、晴は先程まで先生が座っていた椅子に腰掛けていた。


「最近、大丈夫になってきたから」

「何が?」

「勉強し続けなくても」

「ふーん?」


毎日変わらず予習復習はしてるけど、怖くなったり不安になる事はなくなった。


だから前のように何回も繰り返す事はしなくなったって事なんだけど、晴にはそこまで伝わってないだろう。


「まぁ、良かったな!」


ただ何となく、悪い事ではないんだなって。そんな気がするだけなんだ。


理由は分からないけど、相手の表情とか声音で、良い事か悪い事かを嗅ぎ分けられますって感じ?


……犬の嗅覚みたい。