僕は仰向けに倒れると森下先生の顔が逆さまに見えた。



僕はお腹を見た。






メスが一本刺さっていた。





痛い…。





「先生…」




「話さなかったのは話すと拒否されると思ったからだよ。
刺されることを喜ぶ人なんていないからね。
それに神山君本人から了承をもらったから」



「僕はこれからどうなるんですか」


「このままだと死んでしまうよ。
確実に。
私は医者だが君を助ける気は無いから自分で何とかしてくれ」


「病院まで自分の力で歩けと言うんですか」


「それもいいんだけど、今日は休みだよ」



そうだ。



今日は病院が休みで森下先生に特別診察をお願いしたんだ。



だとすると残る手段は一つしかない。




「神山君、君は分かるはずだ。
助かる方法は一つしかない。
能力を使うんだ」



「そんなことを言っても…」



「それじゃあ、しばらく頑張ってくれ」



森下先生は僕から離れていった。



本当に助ける気が無いのだろう。







しばらくすると、僕の意識が薄れてきた。


僕は空を見つめていた。


太陽が眩しかった。



才能だとか能力だとかどうでもいいと思った。


僕の能力などもう当てにならないからだ。


死ぬ前に伊藤、辻本、山本、ナナミに会いたかった…。


僕は目を閉じようとした。


僕は生きることをあきらめた。




最後にナナミともう一度会いたい…








僕は死んだのだろうか。



目をあけると、車が燃えていた。



御父さんは僕を外に逃がした。



お父さんとお母さんが車の中で燃えていた。



救急車と消防車が来た。



水を操る人と水を造る人が共同で車の炎を鎮火した。



僕と両親は病院に搬送された。



同じような夢を何度も見た。



どうせ搬送されている最中で夢は終わるはずだ…







でも今回の夢は終わらなかった。