「林太郎くーん」

慶一は頻繁に帰省するようになる。
すっかり懐かれた。
一人っ子のお坊ちゃま育ちなので兄弟が出来たようで嬉しいらしい。
都会の学生寮に通っているようだが小まめに俺に会いに来ては此処を案内しにあちこち連れ回した。

連れ回すといっても田舎だから都会のような目新しいものは無い。

齢は俺より年下、付け加えると俺の方が身体能力も上回っている。

兼松に頭突きしたせいなのか使用人達は遠巻きに避けてくるので、北王子家で気兼ね無く話せるのは唯一、慶一だった。

そして慶一の人柄の御蔭か彼を介して使用人達も自分に年齢が近い者とは大分会話出来るようになった方だ。