彼女だって、元はあたしと同じ立場だったんだ。


幼なじみと言う長年の関係を変えるのには、今のあたしみたいに相当、悩んでいたと思う。


それでも今は、見事に駆と両想いになっているんだ。



2人が付き合い始めたきっかけについて、あたしは、高校2年生の夏に駆から告白したことぐらいしか知らない。


いくら聞いても、「惚気になるからやだ」と言う理由で絶対に教えてくれないから、水面下でどういう駆け引きが行われていたのかは本人たちにしかわからない。


ただ、あたしが「どうやって幼なじみと言う壁を壊したか」を聞いた時、彼女は「素直になること」なんて難しいアドバイスをくれたけれど。


アイチ曰わく、素直にならないと壁は壊れないらしい。


素直に、かぁ…。


そう思った時、駆が近くに止めてあったベビーカーの前にしゃがんで、中に乗っているだろう赤ちゃんに優しい笑顔を向けた。


それは本当に心からの優しさが見える笑顔で、彼の子ども好きが言われなくてもわかる。


そして丁度その時、並んでいたシーやんに注文の番が回ってきて、アイチはしゃがんでいる駆の方を見た。