「天国、行くんだな」


あたしはその言葉にまた泣きそうになったけれど、ただ1度、頷いた。



天国はここからものすごく遠いところなんだと思う。


だって今見えてる空を越えると宇宙があって、その宇宙を越えるのには気の遠くなるほどの時間がかかる。


もし、天国がその先にあるんだとしたら、ものすごくものすごく遠い。


「真海子に渡したいものがあるんだ」


その言葉に駆を見ると、彼はポケットの中からクローバーのチャームのネックレスを取り出した。


傷付いて欠けてしまってはいたけれど、それは間違いなく、まだ小学生だったあたしが引っ越して行くアイチにプレゼントしたもの。


「何で…?」


これが今、この場にあることが信じられなかった。


もうとっくにどこかに行ってしまったと思っていた。


「あいつ、最期までちゃんとこれ付けてたよ。病院から返してもらったから、真海子に渡しとく」


駆があたしの手にネックレスを置く。


アイチが最期の瞬間まで付けていたもの。


何で。


何であの日に限って付けていたの。


何で。



アイチが最期の瞬間まで付けていたネックレス。


あたしはそれをただぎゅっと握りしめた。