3.箱の中で







冷たい…






懐かしい臭いがする。


これは…


あの部屋の臭いだ。






昭仁さんの趣味のための部屋。


時計を作る部屋…


だからか。


さっきから時計の音がする。


秒針が、正確に時を刻む音。






―カチッ カチッ…







このままずっと目を閉じていたくなる。


ずっと…






ダメだ。


俺にはやることがある。






俺は目を開けた。


現実と向き合うため。







そこは昭仁さんの部屋と似ているようで異なった世界だった。


真ん中にテーブル。


何も置かれていない。


そして壁一面にいくつもの時計。


ここは…バケバコの中か。





「…!」


俺は、あるものに気がついた。


部屋の隅に人がいる。


五人だ…


女の子…?


神隠しの被害者か。


意識のありそうな者はいない。


きっと長くバケバコの中に居すぎたんだ。