2.絶望と崩壊







自分の息遣いが自分の中で反響する。


振り切るように走り続ける。






傷はもう大方塞がった。


塞がらなくてよかったのに。


ずっと、このまま俺に傷を残せばいい。


この痛みはギンのものだから。


忘れてはいけない、ギンが俺に残したギン自身の痛み。






近くから物音がした。


騒がしい。


きっと灰音たちだ。


戦ってるんだ、トキと。


俺も早くそこに…






竹の間に人影…


灰音の背中が見えた。


「灰音!」


俺は加勢するために灰音に近寄った。


「シイ…!ダメだ、来るな!」


「え…?」


灰音は俺を突き飛ばした。





その瞬間、灰音の体が宙に投げ出される。


何が起こったのか分からなかった。


視界が赤く染まって…


俺の前に灰音が落ちた。


地面に赤い水溜まりが広がる。


「灰音…?」