今思えば、あいつは俺が黒い炎の契約をすることを予測してたんじゃないかと思う。


だからこそ10年時間を与えた…


10年経った今、あいつがいつ洋子のもとを訪れてもおかしくない。


あいつは必ず約束を守る。


その根拠がこれだ。


俺が今着ている衣服。


坂本家に世話になる際、俺は服に困らなかった。


坂本家には女しかいないが、男ものの服が最初からこの家にあったのだ。


洋子の母親はお古だと言っていた。


たぶんこれはあいつの服だ。


あいつは最近までこの家で暮らしていたんだ。


それに、洋子は生きている。


それが一番の証拠だ。






―トントン






誰かが部屋のドアを叩いた。


「洋子か?」


「うん、入っていい?」


「どうぞ。」


ドアが開いて、洋子が中に入ってきた。


「どうした?」


「今からおじいちゃん家遊びに行くけど、シイどうする?」


「おじいちゃん?昭人さんの家か?」


「うん。」