驚いた。


こいつは本当に人間なのか?


ボクは戸を開けて外に出た。


「あれ?子供だった。」


昭仁が笑う。


「…無礼者、子供ではないわ。」


「うんうん、わかったよ。」


昭仁がボクの頭を撫でた。


「貴様…ボクを馬鹿にしているのか?」


「してないよ?」


「ボクは神であるぞ?敬語を使え。」


「神様?そうか…じゃない、そうでしたか。」


「…信じてないな。」


「そんなことない…ですよ?」


ボクは石段を降り昭仁の隣に立った。


「その手に持った時計は何なのだ?」


「これかい?」


昭仁はボクに時計を見せた。


ずいぶん古いそれには小さな傷がついているものの、綺麗な状態だった。


大切に扱われたのだろう。


漆黒の文字盤に花と蝶の彫刻が施してある。


「美しい時計だな。」


「ありがとう。先祖代々受け継がれてきたものらしいんだ。」


「ほう。」


「これを結婚する人に贈るんだよ。」