そして手を合わせ何やらつぶやいた。
「うまく行きますように。」
うまく行きますように?
「何がだ。」
ボクは思わず口に出してしまった。
しまった。
まぁどうせ人間ごときにボクの声は聞こえまい。
「え?」
「!?」
…今、こいつボクの声に反応したのか?
いや、気のせいか。
「誰かいるんですか?」
「!」
…まさかな。
ボクは試してみることにした。
「何がうまく行ってほしいのだ?」
「…房枝さんと結婚したいんです。」
「?!」
やっぱり、こいつボクの声が聞こえている。
「お前、名は何というのだ。」
「俺ですか?坂本昭仁です。」
昭仁か。
覚えておこうか。
「あなたは?」
昭仁は無邪気な笑顔でボクに聞いた。
歳は20といったところか。
「ボクに名などない。」
「?…そうですか。そんなところで覗いてないで出てきてくださいよ。」
「…昭仁、お前はボクの姿も見えるのか。」
「ん?」