1.ボクと時計と素直な青年




―捨山神社―





そこがボクの家だ。


ずっと昔、人々は大切なものを捨てなくてはならないときに、そのものをここに持ってきて供養した。


ところが時が経つにつれて、神社はゴミ捨て場のようになってしまった。


ものに感謝の気持ちも抱かぬまま、勝手に捨てていく人間ばかりだった。


今から50年前の今日、 神社に1人の青年が訪れた。





それが、ボクと昭仁との最初の出会いだった。






日が傾き、神社の敷地内で遊んでいた子供たちは各々家に帰って行った。


ここはものがたくさんあるから子供たちにはいい遊び場となっていた。


子供たちの後ろ姿を見送っていると、彼らと入れ違いに1人の青年がやって来た。


手に古そうな時計を持っている。


またか。


こいつも捨てにきたのだな。


そう思った。


だがそいつは違った。


大事そうに時計を握りしめ、どんどんこちらに近づいてくる。


…供養しにきたのか?


ボクは社の戸を少し開け、中からそいつを見ていた。


そいつは賽銭箱の前で立ち止まると、いくらか小銭を投げ入れた。