−奈古美市−






巨大なビルが立ち並ぶ大都市。


大きな映画館やファッションビルなどがあり、日曜日ということもあり、すごい数の人だった。


改札を出て、人の波を掻き分けながら歩く。


左側に人の行列が見える。


きっと最近出来た海外発の有名なドーナツ店だ。


「ドーナツなら買わないぞ。」


私のドーナツへの熱い視線に気づきシイが言った。


「違うもん!私が好きなのはバウムクーヘンだもん。」


「…別にお前の好みなんかきいてねぇよ。」


しばらく歩くとまた行列を見つけた。


「あ!」


あれはバウムクーヘン!


ほ…欲しい!


「おい、行くぞ洋子!」


足がふらふらとバウムクーヘンに向かっていた私を引きずり、シイは黙々と歩き続けた。