5.お困りのようで






―Luna*Lina奈古美本店




店自体が巨大な宝石箱のような形をしており、今は夏なのでないが、冬になればイルミネーションで装飾される。


宝石店なんて高校生の私にはあまり関わりのないものだが、1度は行ってみたいと思っていた。


灰音は何歳かは知らないけど一応大人だし、やっぱりこういう所によく来るんだろうか。





私達は店の入り口付近で立ち止まった。


「大きい建物だね。」


「奈古美じゃ一番でかい宝石店らしいからな。」


「楽しみだわぁ!早く入りましょうよ、ハイネ。」


しかし、灰音は店の前から動かない。


「……。」


「どうしたの?入らないの?」


「うん。つーか入れるわけがない!」


「へ?」


「見よ、俺のこのファッションを。」


灰音は両手を大げさに広げて見せた。


灰音は、赤のジャージに下はグレーのスウェットという格好をしていた。


相変わらず、長い前髪は輪ゴムで括ってある。


「うーん…その格好じゃちょっと入れないね。」


「だろ?」