2.何も言ってくれない





「……こっちだ。」




ステージ裏で待っていたのは中森千秋ではなかった。


彼の代わりにいたのは背の高い男の人だった。


長い前髪の間から、不機嫌そうな目が、警戒するように私たちを見ていた。


「…千秋が…待ってる……。ついてこい。」


そう言って男の人は歩いて行った。


「どうする?」


「どうするって…ついてくしかないだろ。」


私たちは男の人について歩いて行った。


しばらく歩いて男の人はビジネスホテルの前で止まった。


「あの…中森さんは?」


私は恐る恐る尋ねた。


「…千秋は…プロデューサーと反省会中だ…忙しいんだ。」


「そうですか。」


なんか話しにくい人だな。


「…だから…マネージャーである俺が代わりに来た。…二人をお招きするようにと…」


「二人?」


やっぱり、中森千秋にはシイの姿が見えていた。


それに、この人にも…


私は思いきって訊いてみることにした。


「あのっ!あなたは…それに中森さんも…バケバケなんですか?」


「……」