お母さんはまだやることがあるからと部屋を出ていった。


小さな座敷の部屋に、私と男の子だけが残った。


「で?」


私はすぐに話を促した。


「まず自己紹介から。俺はシイ。」


「え、何?」


「シイ。ABCのC。」


「シイ?変な名前…それで?」


「…ひどいな。…さっきの女はトキ。はっきり言うと……俺もトキも人間じゃない。」


「……」


「あんまり驚いてないな。」


「なんとなくわかってた。」


「そうか。」


シイはつまらなさそうに話を続けた。


「俺達はバケバケっていって、モノが人間の強い想いを原動力に人型として動けるようになったものだ。」


「モノ?」


「そう。たとえば…家具とか衣服とか。」


シイは部屋にあったタンスや私の服を指差した。