バケバケ





何を言ってるのこの人…。


私が意味がわからず話についていけないでいると、女の人はふっと顔をあげた。


「…?この嫌な感じ…」


女の人はまっすぐ玄関の方を見た。


「房枝…?あの女もここにいるのか。」


おばあちゃんのこと?


「なぜ…いつも昭仁の隣には房枝がいるのだ。」


女の人が目を伏せた。長い黒髪が揺れる。


「気に入らない。……気に入らないな。」


顔を上げた女の人の表情はこの世のものと思えないほど冷たいものだった。


「ちょうどいい。これの力を試すか。」


女の人は薄く笑みを浮かべ、右手の人差し指と親指を立て、宙に円を描くように回した。


描かれた円の内部が歪み黒い渦になる。


そしてそこから黒い小さな箱が出てきた。


それはちょうど女の人の左の手の平に収まった。