隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

 目が覚めた時、視界に入ってきたのは見覚えのない白い天井。ああ、そういえば病院に来たんだっけ。しかもおんぶされて。なんか、いま今思えばタクシーで来れば良かったよね。あたしも熱のせいでボンヤリだったから。

 見回しても病室には誰も居なかった。左腕がチクチクすると思ったら、点滴が施してあった。点滴を見ていると、目を怪我して、入院していた時のことを思い出した。白い部屋っていうのは、酷く不安になるものだなと子供心に思っていたっけな。

 スーっという音をたて病室の扉が開く。蓮が入ってきた。蓮の姿を見て、ほっとする。

「起きた?」

 息が乱れていたので走ってきたんだと分かる。だめだよ病院内を走っちゃ。

「ごめん、蓮」

「気にすんな。いいから寝てろ」

 明日、仕事だよなぁ蓮。テレビとビデオの配線依頼とわけが違うし。病人に付き添って一晩ここに居て、そのまま仕事はきついんじゃないかと。

「今晩だけひとまず入院だって。扁桃腺の炎症が酷いんだと」

 人生2度目の入院だ。
 蓮はパイプ椅子に座り、買ってきたんだろうペットボトルをガブ飲みする。

「個室じゃん、大丈夫なのかなこんな所」

「なんか開いてるから良いんだってさ。俺も大部屋でいいって言ったんだけど」

 あたしもそう思う。こんな時にお金の心配なんかしたりして。

「明日仕事でしょ? 帰っても大丈夫だよ」

「病人置いて帰れるかよ。ベッド借りられるから寝床は確保した。明日一度帰ってから会社行くよ。遅刻して」

 蓮はニヤっとして言った。ここは病院だけど蓮が居ることでだいぶ安心する。
 救急車のサイレンや、廊下を歩く患者さんか看護師かの足音が聞こえる。静かな病室でそばには蓮が居る。薄暗いから見失わないようにしようと思った。蓮の心音すら聞こえてきそう。