隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「なぁ」

 呼ぶ声にあたしは振り向く。誰を呼んでる? あたしなのか、死んだ彼女なのか。

「俺と、死なない?」

「え……」

 なんて寂しそうな暗い目なんだろう。ミナトさんの心の黒い穴みたいな。恋人を亡くした、傷。

「死なない? ここで」

 何、言ってるんだろう。死ぬって……ミナトさん?

「怪我で片目が見えないなんて、それで今まで生きてきて、苦しいし辛いだろ」

 ミナトさんは、暗くて虚ろな目で見つめてくる。苦しいし辛いだろ? そうだよ、苦しいし辛い。でも。でもあたしは……。

「俺の、あいつも。もう居ないし」

 恋人が事故で顔に大怪我をして、それを苦に自ら命を……。あたしの過去の傷と、ミナトさんの傷。なんの巡り合わせなんだろう。食いつぶされそうな大きな傷を持つものが、ここに2人。ミナトさんは、あたしに「死のう」って言ってる。
 月明かりは、そんな2人を平等に照らす。

「どこ探しても……探すんだけど」

 あたしを見ているようで、見ていないミナトさんの目。

「もう、いやだろ、こんな人生」

 あたしの目が、見えないのが? 彼女が、死んだことが?

「こんな、苦しくて、辛いの。もう、いやだろう?」

「ミナトさん……っ」

「だから、一緒に死なないか?」

 ミナトさんは、あたしの右手を握ってきた。