隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「ミナトさん……?」

「顔の傷、辛いだろ……」

 なんだか、あたしを見ているような見ていないような、とても暗く悲しい目だった。こんな目をするの。そしてミナトさんの指が、あたしの目蓋の傷に触った。なんとなく触った、そんな感じだった。その時、あたしの体に電流が走る。

 だ め。そこは、蓮が……。蓮のキスが。
 金魚の居る部屋で、赤いお祈りのキスが落とされる、蓮の叫びが詰まった、あたしの傷。

「やめて!」

 バシッと、ミナトさんの手を振り払ってしまった。驚いたミナトさんの顔。やってしまってから、しまったと思う。

「ご、ごめんなさい……」

「いや、いい。悪かったよ触ったりして」

 ふいっと、ミナトさんはあたしを離した。怒った……? ミナトさんは立ち上がってマグを取り、もたれていたベッドに腰掛けた。

 沈黙が部屋に充満する。本当に、救いようがないくらい、あたしってバカだ。寂しくて気を引きたくて、誘惑をしておいて、差し伸べられた手を振り払うなんて。

「……いまから」

 ミナトさんの小さな声が聞こてきた。雨音と同じくらいの小さな。

「いまから、海、行かない?」

 え? いまから? こんな時間に? あたしは、眉間に皺が寄っていたと思う。

「この間の約束。前倒しで」

 雨も降ってるのに……。きっと寒いだろう。

「夜の海も、良いもんだよ」

 ちょっと暗い表情が気になったけど、笑顔は優しかった。

「嫌な事、忘れに行こうぜ」