隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

 楽に、なるんだろうか。この、ミナトさんの優しさに、傷口を押さえて倒れ込んでしまえば。右目は、見えないくせに、涙は出る。あとからあとから。ずるい、涙だ。
 腕の中で、あたしはミナトさんに抱かれる事を想像する。抱かれてしまおうか。
 後戻りできなくなれば、蓮の事も気にならなくなるかも、とか。
 心と体を切り離し、楽になるなら、どうでも良かった。

「あたし」

「うん?」

「子供の頃に、怪我して」

 言葉を、途切れ途切れに口から出す。頭で考えてるわけじゃなくて、なんだか自分の口じゃないみたいだった。

「うん」

「目が……」

「目?」

「右目が、見えないの……」

「……」

 何を、言ってるんだろう。なんでこのタイミングで、目の事を。
 本当に、どうでも良かった。気を、引きたかった。同情をされて、慰められたかったから。可愛そうだからっていう理由でも、愛して欲しかった。寂しかったから。
 最悪な女だ。自分の一番の弱点であり切り札。他人が無視できないハンデを、いま、彼に話すという行為。気を引きたくて、泣き叫ぶ子供の様に。
 あたしは、最低な自分の背中にナイフを突き立てた。

「見えない、のか。右目だけ」

 告白を聞いて驚いたのか、あたしを胸から離すと、ミナトさんは悲しそうな顔をした。

「あー……」

 じっと見つめられる。

「あんまりこの距離で顔を見ること無いもんな。見たこと無いから分かんなかったけど、傷がある」

 ふと見ると、ミナトさんは瞳を濡らしていた。