隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「シャワー、ありがとうございました」

「温まった? ずぶ濡れで、寒かったろ」

 くしゃくしゃにして握ってる濡れた服に気付いて「貸して」とハンガーにかけて部屋の端に干してくれた。
 ミナトさんが貸してくれた、トレーナーとチノに着替えていたあたしは、敷かれてある長座布団に座った。貸してくれた服は男物なので、ダボダボだ。

「ココアでいい? あんまり女の子が飲むようなもの無いんだよ」

 ミナトさんは、どこまでも優しい。持って来てくれた甘い香りのココア。嗅覚を優しく解きほぐすかのよう。チョコレート色の温かい液体を一口飲むと、心が落ち着いていく。

「泣いてた理由は聞かないけど、話したいなら、聞くよ」

 ミナトさんは、コーヒーを飲みながら言う。広めの1K。小さな白いテーブルに、ベッド。その部屋に、ミナトさんと2人。

「ごめんなさい、もう大丈夫」

「そっか」

 部屋の窓越し。雨音と風。どれくらい降っているんだろうか。明日も雨なのだろうか。

「無理、しなくていいよ」

 大丈夫、我満できる。ずっとこうして来たじゃないか。普通には、生きてこられなかったんじゃないか。

「もう、泣きそうになってんじゃん」

 こんなの、平気。なんてことない。泣いてなんかない。泣かないよ。泣きたくても、あとで1人で泣くから平気。

「我満しなくていい、泣け」

 自分が泣いているのに気付くのが早かったか、ミナトさんに抱きしめられたのが早いか。

「……っ」

 ミナトさんはあたしを抱きしめ、頭を撫でてくれている。胸に当たった耳から。心臓の音が入ってくる。ドクン、ドクン……。