隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「男でも、できたのか」

 蓮の視線と、瞼へのキス。

「好きなのか?」

 お酒で酔って、潤んだ、熱い、視線。あたしが、好きなのは。本当は。
 本気の本当に、あたしのものにしたいのに。この、目なんか、光さえ感じなくなったっていいのに。欲しいだけ、全部。こんなに、好きだなんて。ううん。最初から分かってたこと。ずっと、蓮が好きだって。他の誰にも渡したくない。
 なんてどす黒いエゴだろうか。このシャワーでも洗い流せない。子供の頃から、ずっとずっと、蓮だけ。彼氏が出来ても、キスされでも抱かれても、頭の中は蓮でいっぱいだったのに。
 蓮に、抱きしめて貰いたいのに。あたしは、あたしは……!!

「詩絵里ちゃん? 大丈夫?」

 コンコン、とバスルームをノックする音。ハッとした。鼻水をすする。

「長いから、心配になって。のぼせるよ?」

 ミナトさんの声。あたしは、深呼吸をひとつした。湯気が喉に当たって、咳こみそうになる。

「……だいじょぶ、です。もうすぐ出ます」

 泣いているのを気付かれないよう、努めて普通に、声を絞り出した。
 早く、体を洗って出なくちゃ。シャワーのお湯は、細かい水滴になり、肌を流れてゆく。涙も流れてゆく。
 同じ水滴でも、さっきの雨とは違っていて、それを流すかのように。
 あたしは顔を思いっきり洗った。泣きながら。

 バスルームから出ると、部屋にいい香りが漂っていた。アロマキャンドルをつけているらしい。そう言えば、玄関にも洗面台にも、火を灯した跡があった。ミナトさんが、部屋のどこかのキャンドルに火を点けたのだろう。