隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「寒いでしょ、いまタオル出すから、シャワー浴びてきなよ」

 この状況。いま、あたしが居るのはミナトさんの部屋。白と黒の、あんまり生活感の無い、こざっぱりとした部屋だった。

 時計は22:00少し前。こんな時間に男の人の部屋に居るとは。
 コンビニで雨やどりをし、濡れネズミになっているあたしを見付けて、ミナトさんは「捨て犬を拾ってる気分」と言った。

 車で来てくれたんだけど、走らせている最中ミナトさんは「寒くない?」とか「お腹空いてない?」しか聞かず、あたしもそれに返事をするだけで、あとはずっと2人は沈黙していた。車の窓には、街の光が雨で滲んで流れていった。

 タオルを貰い、バスルームへ行く。濡れた服を脱いで畳む。あ、畳んだって、乾かさないといけないんだけど……。
 下着も取って、裸になる。それがバスルームの鏡に映った。

「はぁ……」

 熱いシャワーを頭から浴び、体が温まるのを感じる。冷え切った体は、温められて細胞が生き返るようだった。
 シャンプーやボディソープが並ぶ棚。男性化粧品コーナーで良く見るようなもので、例えばトリートメントやクレンジングがあるわけではなかった。全て男性のもの。女性のものは無かった。何をチェックしてるのか、あたしは。
 頭にシャワーを当てて、じっとしていると、蓮の声が頭に響く。

「お前の事、一番分かる友達」

 バカヤロウ。友達が、瞼にキスなんかするんじゃないわよ。そう心の中で悪態をつく。酒に酔って潤んだ目が思い出された。
 あの目を、他の誰にするの。考えたら心が切り裂かれそうで。