隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「もしもし? 詩絵里ちゃん?」

「あ……」

 電話の声はミナトさんだった。

「何ガッカリしてんのさーショックだなぁ」

「いや、えと、違うの」

 何が違うんだか。ガッカリ、してるじゃないの。蓮じゃなくて違う人だったから。

「ちが……」

「詩絵里ちゃん? どうした? なんかあったのか」

「ミナトさ……」

 雨が、降ってきた。冷たい雨。無意識に溢れてきた涙が、雨に混じって頬を伝う。声も震えてしまっていた。

 ともだち。友達。そうだね、友達だよね、一番の。
 分かってんじゃん。ずっとそうだったじゃない。友達だったんだよずっと。

 友達に、お祈りのキスをする蓮。恋人へのキスではなく。分かってる。蓮は一度だってあたしを恋人だと言ったことなく、あたしもそうだった。

 乳房の間あたりがギュっと締め付けられるような感覚。涙腺が涙を素通りさせてる。涙は温かいはずだけど、冷たい雨で冷やされる。頬も、心も。
 コンビニの外で、ミナトさんを待っている間ずっと、あの角を曲がって蓮が来るんじゃないかと、じっと暗闇を見ていた。