隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「なに怒ってんだよ……」

 後ろで小さく蓮の呟きが聞こえた。構わずに外へ出た。重いドアを力一杯開けて閉める。音楽とざわめきが一瞬で聞こえなくなり、地上へ出ると夜があたしを包む。このまま、あたしを見えなくして欲しかった。

 バカ。バカはあたし。

 都合の悪いことを聞かれた。だから不機嫌になった。怒鳴って出てきたりして、子供みたいだ。バカなのはあたし。
 ミナトさんの事、蓮に言えなかった。知られたくなかった。
 ミナトさんに蓮のことと目のことを隠して、蓮にはミナトさんのことを隠している。あたしの隠しスペースは、そのことでいっぱいだった。

 ウキウキしてるのを、蓮に気付かれて、そんな自分がイヤで。大声出しちゃった。蓮は変に思っただろうし、もしかしたら怒ったかもしれない。
 ああもう、本当にイヤ。自己嫌悪に陥り、トボトボと歩き出した。

 しばらく歩いたところで、電話がバックの中で鳴っているのに気付く。大急ぎで探す。こういう時ってなんですぐ見付からないんだろう。蓮が電話してきたんじゃ……。画面もろくに見ないで、電話に出た。