「でも、きれいな髪だね。俺、髪の長い子好き」

 あたしの隣に座ってる、この人はミナトさん。常田 湊(トキタ ミナト)。さっき、覚えるまで何度も言わされたから。

「あ、でも長い髪が好きって人って、以外と彼女がショートだったりしますよね」

「し、しえりちゃん」

 だってそう思うもん。

 ミナトさん、2つ年上。第一印象、背が高く、いい人そう。
 そんなことにあまり興味は無くて、早くこの場がお開きになればいいのに。ずっとそう思っている。

「しえり、ってシェリーから来てるの?」

 ミナトさんは、焼き鳥を串から一生懸命外している。

「うん、フランス語で愛しいとか、大切なとか。なんかそんな感じ」

「へえ~いい名前じゃない」

 にっこり笑う。笑顔が、素敵だなと思った。良いところ1つ見つけた。

「……可愛いすぎない?」

「んなことないさ、名付けの親に感謝しなきゃ。焼き鳥食う?」 

 焼き鳥が乗った皿を指差す。お年寄りは発音がねえ、とか思いながら焼き鳥は食べたかったので頷いた。

「ハイ、口あけて」

 うっかり言われるがまま、あんぐり開けたら、箸で焼き鳥を放り込まれた。