隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

 ある日、蓮が言った。

「俺が居なくなったら、詩絵里はどうするんだろうな」

 また、駅東口のカフェ。蓮が煙草を吸うので喫煙スペースに居る。ざわざわとした音の中、蓮の声をたぐり寄せていた。

 どうするって?
 あたしは水滴の付いたグラスに、ナフキンを巻いている途中だったけど、蓮を二度見してしまった。

 そんなことを言うと思ってなかったから、ビックリした。何を言ってんだろうコイツは。息が止まると思った。

「なに……言ってんのー?」

 だいぶ長い沈黙を2人の間に差し込んで、あたしはやっとそんなことを言う。息も絶え絶えみたいな声だ。自分でも分かる。
 冗談、冗談の話だ多分。居なくなるわけない。

 蓮はあっちの方を向いて、煙草に火を付けて、あたしの前にあるグラスあたりに視線を戻す。
 前髪がサラサラって鳴ってる。
 今まで何度も、その煙草を吸う仕草を見て思っていた。その一本を吸う間は、あたしのことを忘れてるんだろうかと。目のことから解放されているんだろうかと。

「いつまでも俺がそばに居るとは限らないなぁって、たまに考える」

「どういうこと?」

 あたしは、虚ろに聞く。

「居なくなるってこと?」

「そう」