隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

 今更、あなたが好きなんですって言っても、たぶん蓮は困って、その困った顔を見て、また胸が痛くなって。ちょっと嬉しいのかな、それは。

 言ったら楽になるんだろうか。思いを伝えたら、どうなるんだろうか。「好きですけどもういいですよ。今までお疲れさまでしたありがとう」って?

 誰が? 誰が、あたしが? あたしは苦しいんだろうか。蓮は苦しいんだろうか。いや多分、気持ちよくはないんだろうけど。

 もうわけが分からない考えたくない。ああ、また胸が痛い。
 濡れた紙ナフキンが乾ききった頃、ヨウコちゃんとお別れした。

 キンモクセイの匂いが夕暮れの街に充満していて、頭がくらくらした。蓮に触られている時と同じくらくら。

 風になぶられ、長めの髪の毛がグロスを塗った唇にくっつく。それにイラつく。

 夕焼けに照らされて真っ赤になった自分の手を見て、蓮のサラサラの髪の毛を思い出した。
 なんだか帰り道がどっちか分からなくなってしまった。
 呼び出したら蓮は迎えに来てくれるだろうか。