「お前、なにやってんだ!」

 蓮のお父さんはそう彼を怒鳴ったけれど、それは、あたしとあたしの親の手前そうせざるを得なかったからで、蓮のお父さんだってどうしたら良いのか分からなかったはずだ。
 怒鳴らないで。怒らないで蓮のお父さん。蓮を怒らないで。

 2人が仲良しだったことも、双方の親がよく分かっている。

「詩絵里のね、こっちのおめめはね、もうぼんやりのままなんだって……」

 お母さんは目を赤く腫らしてそう言った。どうしたのお母さん。泣いたの? どこか痛いの?
 その時は全ての意味が分からなかったけれど、幼いながらも「ほかの人と違う風になってしまったんだな」と考えた。

 片目になってしまって「あたしはこれからどうなるんだろう」と不安にもなったけど、そんなことより、お母さんとお父さんの悲しそうな、あたし不憫に思って哀れんでいる顔を見るのが、凄くイヤだった。

「お子さんの右目は、もう視力回復は見込めません」とかなんとか、医者に言われたんだろうな。