隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「あたしを置いてどっか行くなんて許さん」

「なにお前、また泣くの?」

 言われてから気付く。あたしもう泣きそうだ。事故って死にそうになって、これ以上どうするって言うんだ。

 またどこかへ行く気なの? あたしを置いてどこかへ。

「瀕死から復活して、そんなこと言わないでよ。心配したんだから」

 こんな包帯だらけで。

「もうさ、そんでこういうのとか」

 あたしはバッグから「臓器提供意思表示カード」を取り出す。

「もういいから」

 涙は、一瞬にして零れ出る。もう抑えられない。だめだ。

「あたし、蓮のこと恨んでたり、憎んでたりしてないから」

 嗚咽も出てきた。うまく喋れないよ。蓮、蓮……。

「してないから……」

 短い溜息みたいなのをひとつ吐いて、蓮は言う。

「そういうんじゃないよ」

「なに……が」

「……詩絵里のことも、自分のしたことも」

 あたしは、喉が詰まって、言葉がうまく出ない。

「いろんなこと全部背負って生きるって決めたんだ」

 揺れない、強い言葉だった。強い視線で、でも優しくあたしを見る。

「それがこの刺青」

 背負うとか、そんな風に言わないで。