隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「何やってんの、バカじゃないの? なにこれ……」

 分からないけど、何やってんだろうこの人。でもなんで、なんで刺青なんか。理由があるはずだろう。こういうのに憧れでもあったんだろうか。憧れだけで彫るものじゃないって、蓮だって分かってるはず。あたし、毎日病院に来てたのに、誰も教えてくれなかったし。
 まぁ、体拭いたりとかいうのは、あたしの役目じゃなかったから仕方ないけどゴニョゴニョ。

「笑うなよ?」

 蓮が口を尖らせて言う。

「……肩胛骨は、むかし人間が天使だった頃の翼の名残りだって」

 あたしは目を見開いていたようだ。「だから笑うなよ」と蓮が言う。

「ちょ、天使って」

 蓮がそんなことを言うとは。そういうの信じなさそうなのに。

「……中2病、こじらせたの……?」

「ちげーよ!! 真面目に言ってんだよ」

 あらら、怒っちゃったかな。
 でも、どこかでそんな話を聞いたような気がする。肩胛骨は翼の名残。いつかまた、翼は生えてくるって。蓮の背中を見て、思った。本当に生えるんだ……。それくらい綺麗だったから。

「さ、触っていい?」

「だめー」

「えーケチ!」

 蓮の綺麗な背中に綺麗な翼。触れたいな。痛いのかな。