隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~


 目覚めた蓮。帰ってきた蓮。
 それからはもう、連日この病室は大騒ぎ。会社の人や友達、タケさんが無駄に連れてくる知り合いなどなど。
 蓮のギブスには落書きが増えていった。

 朝、目覚めると、あたしはまずほっぺたをつねる。夢なんじゃないかと、思うから。病室で蓮の笑顔を見るまでは、安心できない毎日。蓮の顔を見て、動いて喋ってるのを見て、そして安心するんだ。

 1ヶ月眠ったままだった蓮だけど、脳波も以上無く、食欲もあって、3日もすると起きて松葉杖で歩けるようになった。これも、若さだと先生が言っていた。ギプスも早く取れると良いな。

 本日も、蓮のおそばに居るあたしです。着替えだと言って、蓮は後ろを向き片手でパジャマを脱いだ。おーおー、女の目の前でいきなり生着替えしないで欲しいな。
 少し痩せた。肋骨を骨折しているから、胸のあたりまで包帯が巻かれている。
 そして、背中を見て、あたしはビックリした。
 蓮の背中には翼が生えていた。いや、あの鳥の羽根ではなくて、それは刺青だった。
 いつの間に入れたんだろう。怖いとか、痛そうだとか、そういう気持ちよりも先に、なんて綺麗なんだろうと。あんまり綺麗で、息を呑む。
 両の肩胛骨に広がる感じで、肩のあたりまで。小ぶりで深い青色一色の翼だった。

「なにこれ……っ。どうしたの?」

「すんごい痛かった。熱出ちゃって参ったし」

 もしかしてあの事故の前の。そうか、これを彫ったから熱が出たのか。そっか、そういうことだったのか。