隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

 蓮のお母さんが病室を後にして、1人になった。読もうと思って持ってきた本もあるけど、なんだか読む気にならないな。マンガ本の方が良かったかな。光の入り込んだ病室をぐるりと眺める。何か足りないものあっただろうか。
 点滴に陽が当たって、蓮の腕に光を落とす。今日も天気がいい。病室にも惜しみなく光が入る。窓際にある棚に2つ並んだ金魚鉢もキラキラ光っている。

 はたして病室に金魚なんて持ってきて良いのだろうかと思ったけれど、何も言われないからそのままだ。

 蓮のとあたしの金魚。蓮の金魚ちゃんは、ご主人さま入院中。餌を貰えないわけだから、困るもんね。金魚に微笑んで、
 まじまじと蓮の寝顔を見る。昏々と眠っている。眠りの森の王子様だな。んー王子様って感じじゃないか。
 なんかもう5年くらい戦ってない正義の味方戦隊の、レッドじゃなくてブルーあたりかな。とか考える。

「蓮」

 声をかけてみても、当たり前だけど反応は無い。起きているなら話し相手にもなるだろうけれど、眠っているのであたしは特にすることもない。あんまりずっと寝顔見てても、変態かと思われるしな。見てるけど。

 あ、そうだ。2匹の金魚。一緒の水槽にしちゃおうかな。そのほうが世話もラクだし。一緒にしちゃっても、見分けはつくから大丈夫。あたしの金魚は尾ヒレに黒い斑点が無いから。
 あたしのやつを、そっと手ですくって蓮の水槽に移した。ちょっと窮屈そうだけど。急に知らない人(金魚)が入ってきたもんだから、蓮の金魚はビックリしてるんだろうな。「お前誰や」って顔してる。してるように見える。最初からビックリ顔だから分からないけど。

 あたしの水槽はプラスチックの安いやつだけど、蓮のは丸い形で縁がヒラヒラってなってるやつ。よくドラマとかで見るような可愛いやつ。縁のヒラヒラは緑色。
 金魚の赤と水の感じ、緑のヒラヒラは太陽光線を吸い込んで光り、まるで笑っているみたいだった。