隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

 今日は、付きっきりだった蓮のお母さんをお休みさせてあげたくて、ちょっと無理矢理だったけれど、1日病院に居て蓮の面倒を見ることにした。
 あたしは蓮の、いわゆる彼女でもなんでもないのに出しゃばりかなとドキドキしたけれど、お母さんは喜んでくれた。彼女じゃないけど、お母さんも分かってる。

 幸か不幸か、この事故があってから、うちの両親もお見舞いに来たし、蓮の両親とも久々の再会をしていた。蓮は眠っているけれど、その病室で、昔話に花が咲いているんだ。
 蓮のバイク事故が無ければ、きっとこういう風にはならなかっただろう。不思議だなって思う。
 蓮のお母さんが「じゃあ、悪いわね。助かるわ。1日よろしくね」と笑ってくれて、あたしはホッとした。

「蓮は、幸せね」

 蓮のお母さんは目を細める。

「毎日のように、しーちゃんに来て貰えて」

 早く起きなくちゃね、そう言って蓮の額をゆっくり撫でた。
 違うんですお母さん。
 あたし何も出来ないから、病院に来て蓮を見ているだけ。じっと寝顔を。早く目が覚めるよう、蓮のそばで祈っているだけ……。

「あたしなにも出来ないから、見てなきゃと思って」

 病室の窓から見える道路の信号機は、赤から青へ変わっていく。

「蓮には、助けてもらってばかりだったから。今までずっと」

「しーちゃん……」

「あたし、恩返ししたいんです」

 聞こえてる? 蓮。

「だから、見てます」

 この片方の目で。見えない目も、ずっと蓮のことを見てるよ。

「これから、ずっと」