隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

 天気の良い日だ。院内は暖房が利いていて暖かい。もう陽が傾いてきている時間だ。廊下を少し歩いて、蓮の病室へ入る。

「お、なかなかいい部屋」

「ねぇ贅沢ですよ、蓮ってば」

 病院へ来る途中で買ってきた、いかにもって感じのフルーツ盛り合わせ。それをテーブルに置く。蓮は食べられないけど、みんなで食べてって。賑やかにしてたら、起きるかもなって。

「俺、バナナ食っちゃおうかなぁ、腹減った」

 さっき牛乳飲んだじゃない。なにその健康的な食事。くすっと笑って、あたしは、窓の外に目をやる。道路が見える。夕暮れ時、ブレーキランプがたくさん付く病院前の道路。

「おーい、れん! 来てやったぞ、起きろ」

 タケさんは、蓮の鼻を軽くつまんで呼びかけていた。あたしと同じことしてる。あんまりぎゅっとつまむと、鼻水出ますよ。出てないかな、大丈夫だね。
 蓮の枕元で、あたしとタケさんはお喋りをする。タケさんはバナナ、あたしは苺を食べながら。

「あ、ティッシュ無いや。あたし買ってきます」

 ボックスティッシュ、切らしちゃってる。戸棚の中を見ても無かった。あー別に無くてもいいけど、とタケさんが言う。

「蓮のヨダレ拭いたり、あたしがこっそり泣く時に使うの」

 とりあえず、蓮をタケさんに頼み、売店へ行くことにした。
 病院の夕食は早い。美味しそうな匂いが漂っている。患者さんと家族、医師や看護師、いろいろな人が院内には居た。

 売店で、ボックスティッシュと、ペットボトルのお茶を買い、パン売り場の所へ寄って、買わないで出る。そして院内掲示板を見たりして、少し遠回りして病室へ帰ろうと思った。
 エレベーターを降りて、病室の前まで来る。