隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~


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「いいのかな、俺行っても」

「ちょ、何言ってるですか」

 タケさんと、あたしの会話。入院当日に会ってから、タケさんは結局今日まで病院には来なくて、この間久しぶりに店に行ったんだ。蓮の状態とかを話そうと思って。そして、顔見に来てくださいって誘った。
 病院の入口まで来て、タケさんは「俺なんか行っていいのか」とか意味不明なことを言っている。
 自分が病院で浮いてると感じるらしい。浮いてるとか浮いてないとか、別に良いじゃないか! 変な人だな。変な人だけど。(知ってるけど)

「タケさん、風邪ひいても病院行かないもんねー」

 図体デカいくせに割と小心だね。なんか、緊張しちゃってんの、かわいい。大きなエンジン音のハーレーで来て、駐車して、なかなか病室に行かない。もう、早く行こうよ。

「あんなもん、気合いで治る」

 口を尖らせ、そんで煙草をくわえる。あーだめだめ、ここで吸っちゃ。

「喫煙所、行きますか」

 慣れた足取りで、タケさんを連れて待合いスペースを通り、奥へ進む。喫煙所は病院の裏手だ。
 大きな総合病院。待合いスペースも広く、その奥にはカフェまで併設されている。患者で込み合い、呼び出しアナウンスが鳴り響く。白衣の人達も歩き回り、慌ただしい感じを醸し出している。病院は苦手。でも、いまここには蓮が眠ってる。

 廊下の突き当たりを曲がり、外へのドアを開く。そこに屋根とベンチ、そして灰皿が設置されていた。【もくもくハウス】と書いてある、病院の喫煙所。
 建物の陰なので、太陽があまり当たらず、凄く寒く感じる。

「それ吸ったら、行きましょ」

 せっかくフルーツ盛り合わせ買ったのに。バイクの後ろで、抱えてるの大変だったんだから。

「こんな言い方もアレですけど、寝てるから何喋っても大丈夫ですよ」

「……まぁ、そりゃそうだな」