隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「ここのパン食べた? 理名ちゃん。美味しいんだよ」

「え、マジ? 知らないっ買う!」

 こうやってると、理名ちゃんはちょっと年下の女友達って感じ。もっと早く、こうしてれば良かった。妹というか、女の友達。中学3年生でも、もう大人なんだなぁって。

 談話スペースに、2人で食べきれないくらいのパンを並べ、お茶をした。誰の分のパンなんだよこれ。空腹の時に買い物をしちゃだめだって、テレビで言ってたなそういえば。

「ごめんなさい、詩絵里さん」 

 ふと会話が途切れて、静かになって、そして理名ちゃんが話し出した。。

「事故の日、あたし酷いこと、言った」

 理名ちゃんはそう言って、下を向いてしまった。口元にパンくずが付いている。

「大丈夫だよ、あたしも、悪いんだ」

 あたしは、理名ちゃんのパンくずを取ってあげながら、そう言ったけれど、誰が悪いとか、なにが悪いとか、そういうのちょっと違うのかもしれないな。

「本当は、詩絵里さんと仲良くなりたかったんだ。素直に仲間に入れなくて」

「理名ちゃん……」

 素直になるって、簡単ではないのかもしれないね。2人で遠回りしたね。

「詩絵里さん、これからは理名と、お買い物行ったり、お茶したりしてくんないかな?」

「も、もちろん!」

 わあ、素直に嬉しい。夢みたいだな。理名ちゃんにこんな風に言ってもらえるなんて。
 ゆっくり、友達になって行こう。できるよね。次第にぎこちなさも無くなるだろう。

「お兄ちゃん、目覚めるかな」

 まっすぐあたしを見て言う。

「うん、あたしも、理名ちゃんも待ってるもん」

 蓮、あなたが目覚めたら、嬉しくて笑顔になる人達がたくさん居るんだよ。
 お父さん、お母さん、理名ちゃん。会社の人、同級生。そしてタケさん。みんな、待ってる。その日が来るのを。
 早く、早く帰ってきて。早く目覚めて。