隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~


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 膝や顔にあった傷は、だいぶ治ってきていた。
 ガーゼがまだちょっと取れないのは、5針縫った傷がある首のあたりだけ。でも「若いから治りが早いのね」なんて看護師さんが言っていた。美人な看護師さんで、意識があったら蓮はデレデレするんだろうなぁ。
 事故から、今日で1ヶ月。永遠とも思える1ヶ月。
 まだ蓮は眠ったまま。意識さえ戻れば大丈夫らしいのだけど、目を覚まさない。意識が無いだけで、傷はちゃんと治ってきている。それが生きてるって証拠だ。

 光が見えないトンネルに居るみたいだ。蓮の家族も、不安と疲労の色が濃くなってきていた。蓮は右の腕と足を骨折し、肋骨も2本折れていた。

 トラックとガードレールの間に挟まって転倒して、この程度で済んだのは奇跡に近いと先生が言っていた。もし……と考えると変な汗が出る。あちこちの包帯は痛々しいけれど、本当に生きていて良かった。右腕右足ギプス男だけど。意識さえ戻れば。


 バイトが終われば病院へ、バイトが無い日も病院へ。蓮の顔を見に来ている。いつ目を覚ますか、今日じゃないか、明日じゃないか、今もしかして。と毎日気になって仕方がない。
 目を覚ました時に、近くに居たい。できれば、蓮が目を覚ました時に、一番に笑顔で会いたい。そう願っている。もちろん、必ず意識が戻るとは限らないけれど。一生このままかもしれない。

「詩絵里さん」

 後ろから声がした。振り返ると、理名ちゃんだった。

「あ、こんにちは~」

 病院の廊下。蓮の病室へ行く途中だった。

「今日はお兄ちゃん、ほっぺがちょっと赤いんですよ」

 クスクス笑ってる。え~赤いんだほっぺ。血色良くなったんだね。

「調子いいんだね、蓮」

「そうみたい」

 あたしは嬉しくて笑いかける。理名ちゃんも、笑顔だ。あたしは病院に来たばっかりだったから、ちょっと理名ちゃんを誘って、院内売店へ行こうと思った。喉も乾いたし。